2000年日本シリーズ
ダイエー VS 巨人
2000年11月1日作成
加筆修正して 2001年2月24日掲載


第一戦【10月21日(土)】
5−3でダイエーの快勝(一勝)

 第一戦を見た限り、ダイエーの方が戦い慣れしているように感じた。ダイエーは状況によって正しく判断する力をこの二年間でかなり貯えてきた。投手リレーにしろ、代打やバントにしろ、きちんとした考え方のもとで行われている。その結果が早めの投手交代や、調子のいい打者を避けるよう適切に指示することで失点を最小限に抑えた。攻撃では結果的には失敗したけどバントによる作戦は納得のいく戦法だったと思う。その代わりというわけではないが、代打で登場したニエベスが豪快なホームランをかっ飛ばしてくれたおかげで、失敗を帳消しにしてくれた。このように適材適所でチームを動かしたことが第一戦の勝利につながったんだと思う。
 対する巨人はというと場当たり的な作戦ばかりが目立った。打線はバントで送るべき場面で失敗したり、せっかくのチャンスもなんの作戦も与えずにただ打たせてしまったために大量点を逃してしまう。作戦次第では大差で圧勝できた展開だけに非常に悔やまれる。投手リレーでは今年実績を残していない槙原を同点で投入、その直後にホームランを打たれ、この試合を落としてしまう。せっかく巨大な戦力を保有していても、勝つための戦術を講じなければ宝の持ち腐れだ。

第二戦【10月22日(日)】
8−3でダイエーの連勝(二勝)

 二戦目も両チームの戦い方は変わらなかった。ダイエーはいつも通りの野球をし、巨人は相変わらず行き当たりばったりの試合をした。これでは結果は目に見えている。
 勝敗のポイントは巨人三点リードで迎えた五回表の攻防に尽きる。この回ダイエーはノーアウト二三塁というチャンスを作る。そこで巨人は内野の前進守備を指示する。その直後ダイエー柴原の打球は前進守備のセカンドの左をかすめるセンター前タイムリーヒットを放つ。これで勢いのついたダイエー打線は立て続けにヒットを重ね逆転する。なおツーアウト二三塁で巨人は外野に前進守備を指示した。ここでも前進したことがあだとなって、普通なら取れる打球をセンターオーバーの二塁打にしてしまう。結局この回は大量六失点してしまう。
 この回の大量失点は防ごうと思えば防げたはずだ。まずはランナーを二人置いてはいるけど三点リードの場面、普通に守らせていれば柴原の打球は取れていたかもしれない。次はツーアウトでバッターは長距離打者の場面、ここも普通の守備位置なら楽にとれていた打球だ。いずれも前進守備をとるべきではない場面で指示していずれも裏目に出た。逆に定位置の守備で不運の打球が来ても仕方が無い。そうなる確率は少ないからだ。このことで巨人ベンチは状況判断が出来ないことを露呈した。五回の取り返しのつかない大量失点を招いた巨人は最後まで追いつくことなく連敗した。

第三戦【10月23日(月)】
9−3で巨人が雪辱(一勝二敗)

 第三戦は戦力差がそのまま点差に表れた。3−3で迎えた三回、ようやく実力を発揮した巨人は力で四点をもぎ取る。その後も追加点を入れた巨人は大差をつけたまま勝利した。  ポイントはダイエーが二回裏に同点に追いついてなお、ツーアウト二塁でライトに抜けそうな当たりを仁志が横っ飛びで取ると飛び出したランナーをホームで刺した。このプレイでダイエーの勢いは完全に止められた。この回を境に巨人先発の上原は調子を取り戻す。打線もダイエー投手陣を打ち崩し、大量リードを奪った。
 上原は八回を三点で抑える好投をした。九回に登板した岡島は先頭打者にフォアボールを出したものの、後続は三人で抑え巨人にシリーズ初勝利をもたらした。

『確かに勝ったけど』

 三戦目にしてようやく巨人打線が爆発した。とはいえ、打線が単純に打ちまくっただけで、戦術を考える必要が無かった。一応打順を替えてはきたけど、誰もが考えられる作戦なので戦術というには程遠い。つまり、今年の巨人は誰が監督でも勝つことが出来る戦力があることをこの試合で証明したといえよう。これだけの戦力があればこの三連戦は悪くても勝ち越せたはずだ。それでも負け越したのはひとえに監督の力量不足に他ならない。逆にいえば、監督の実力の無さがこの対戦を面白くしているのかもしれない。そう考えると、これで巨人が日本一になれなければ、いかに長島が監督に向いていないかが全国に知れ渡ってしまう。本当にそうなればいろんな意味で面白いと思うので今から非常に楽しみだ。
 ダイエーにしてみれば勝ちゲームで使う中継ぎ投手を温存できたことは大きい。打たれた投手はいずれも先発や敗戦処理ばかりなのでこの試合の負けは全然痛くない。戦力差を考えればこれでようやく五分の状態になったといえよう。

第四戦【10月26日(木)】
2−1で巨人が競り勝つ(二勝二敗)

 この試合でも巨人の効率の悪い攻撃が目立った。初回巨人はノーアウト一塁でバントをしてきた。次の清原がタイムリーヒットを放ったので幸先がいいと思われた。しかし、結果的にバントで与えたアウトが痛かった。ワンアウト満塁まで責め立てるものの、高橋がゲッツーでチャンスは途絶えた。さらに次の回先頭の江藤がホームランを打っただけに、もったいないバントだったと思う。

『でたよ、巨人贔屓の判定』

 いずれもダイエーの攻撃で六回裏ツーアウト一塁で松中の打球は一二塁間を抜きそうだった。それを仁志が好捕してファーストへ、タイミングはセーフだったが判定はアウト。もう一つは七回裏ワンアウト一塁でバントを外される。ランナーは二塁へ、キャッチャーからの送球はそれる。ショウトも緩やかな追いタッチになってタイミングはセーフだった。にも関わらず判定はアウト。この直後、井口が三塁打を打っただけに非常にいただけないジャッジだったと思う。
 点は巨人が一二回に一点ずつ、ダイエーは一回に一点を取っただけで巨人一点リードのまま終盤を迎える。そのまま試合は終了して巨人は一点差を守りきった。ダイエーは審判の巨人贔屓で敗れたといっても過言ではない。

第五戦【10月27(金)】
6−0で巨人圧勝で日本一に王手(三勝二敗)

 第五戦は巨人の巨大戦力が効率の悪い攻撃を帳消しにした。打撃では高橋由伸、江藤がソロホームランで先制。七回に村田真一が駄目押しのツーランを放つ。さらに八回は高橋由伸の二点タイムリーでトドメを刺した。投げても高橋尚成(ひさのり)が二安打完封という完璧なピッチング。ダイエーは手も足も出ず三連敗してしまった。
 シリーズ中もっともつまらない試合だった。完全にチームの戦力差で負けたようなものだ。なにも考えずにただ選手に任せればいいのだから巨人の監督は何もしなくても勝てる。ていうか監督はいなくてもいいと思うほど、とてつもない戦力を保有している。

『勝負あったか?』

 ダイエーは一二戦こそ長島監督の采配ミスで勝ちを拾ったけど、もう駄目かもしれない。戦力の差もあるし、巨大戦力との戦いで相当体力を消耗してしまったようだ。巨人の自力が出ないうちに、つまりは一気に四連勝で勝負を決めるしかなかったようだ。そう出来なかったのは第三戦で仁志がファインプレーをしてダイエーの逆転を阻止されたからだ。また第四戦で審判のミスジャッジで敗れたことも大きい。第五戦ではダイエーに流れが戻ることは一度もなかった。もはやダイエーが逆転日本一になるには長島監督が大きなミスを一度ならず連発するくらいの奇跡が起こらない限りは無理だと思う。
 まだ終わってないけど、ダイエーはよく戦った。限られた戦力をフルに生かした戦いは賞賛に値する。しかし、いかんせん巨人の力が常軌を逸していた。分かっていたこととはいえ、これだけチーム力が違うとダイエーも打つ手がない。こうなると本当に奇跡がダイエーに起こってほしいと願うばかりだ。

第六戦【10月28日(土)】
9−3で巨人が力でねじ伏せ日本一(あーあ、つまんない)

 ダイエーが先制するものの、巨人はその裏、メイのフォアボールをきっかけに逆転する。さらにピッチャーが渡辺正一に交代したものの、二点を追加されてしまう。すぐさま四回に城島がソロホームランを打ち二点差にする。ところが五回に代わった吉田修司が打たれ、大量点を取られる。大差がつく前に切り札である二枚の左投手で打たれたのだから仕方がない。その後ダイエーは一点を返すのが精一杯。結局9−3で巨人が勝利した。

『シリーズ総評』

 奇跡は起こらなかった。戦力があまりにも違う上、ダイエーは主力打者である小久保と松中が怪我で本来の力を発揮出来なかったことも痛かった。期待の先発陣も満足に投げきった投手は一人もいなかった。これでは勝てる筈がない。こんな状態で一二戦を勝てただけでもラッキーかもしれない。ただ、できれば勝って当たり前のチームが不様に敗れるところが見たかった。そうすれば今ごろはいろんな意味で大変なことになっていたに違いない。でも、終わってみれば予想通りの展開で幕を閉じるという非常につまらない結末だった。